研究内容
交通事故,転倒・転落,スポーツ事故をきっかけにヒト頭部が衝撃を受け,骨折・脳内出血や神経損傷など様々な頭部外傷を引受けされます.当研究室では,これらの状況下における衝撃と損傷関係を明らかにするためのコンピューターシミュレーションシステムを開発しています.開発したシステムでは受傷するシーンを全身数値モデルを用いて衝突を受けた時の全身挙動を再現し,受傷状況を可視化します.さらに脳内の力学負荷と損傷の関係を示すために,頭部数値モデルを用いて衝撃解析を行い,脳への力学パラメータの時間的・空間的な分布を可視化します.このシステムによって,実衝突状況下における脳へのダメージを定量評価し,力学負荷によって引き起こされる可能性のある損傷を推定することを目指します.さらに,頭部から衝突を守るためのプロテクターの開発も行っています.
![](https://eas-sophia.jp/sophia-eas/wp-content/uploads/2023/03/004-1024x615.png)
最近の研究テーマ
スポーツ脳振盪発症メカニズムの解明
脳振盪とは,頭部が何らかの衝撃を受けた際に発現する神経の機能的変化で意識消失,意識障害,記憶障害,けいれん等の症状を指します.昨今スポーツ人口の増加により「スポーツ脳振盪」が注目されている.脳振盪の異なった受傷機転によって現れる症状が異なることが臨床的に知られています.本研究では,受傷時に録画されたビデオで画像解析を基にコンピューターシミュレーションを用いて,衝撃によって生じる頭部の挙動および脳の変形の時間的・空間的な分布を精度高く見積もることによって脳振盪の発症メカニズムの解明を目指しています.
高次脳機能障害発症予測システムの開発
高次脳機能障害は脳の神経損傷の一種であります.頭部外傷後の高次脳機能障害例では家庭復帰は出来ても社会復帰は不完全となることが多いです.医療・福祉面で適切な対応・支援がなされることで復職・業務の遂行が可能となる例もあります.一方,放射線学的所見として器質的異常を確認できない症例では様々な局面での対応の遅れが生じることがあります.本研究では,一緒に研究を行っている脳神経外科医より医療所見を基に,受傷するシーンをシミュレーションで推定することによって,脳内の力学負荷を定量的に評価します.複数の症例を再現解析することによって,力学における神経損傷の評価方法を確立します.
頭部外傷予防のためのプロテクターの開発
様々な受傷状況による力学負荷を定量的に評価することによって,それぞれの受傷機転でのさらなる有効な予防策および防具を開発することが可能となります.本研究では,スポーツで使用するヘッドギア・ヘルメット,自転車・バイクのヘルメットの保護性能を評価することによって,各受傷機転に適した保護具の形状および使用する緩衝材の提案を目指しています.